2009年08月25日

夢妙堂の試し読み〜。


「ルカはお姉ちゃんだからゆなの事を守ってあげてね…」
私にそう言った母はその翌日に蒸発した。

それが5年前の話、私が9歳で妹のゆなが7歳の時だった。
それ以来、ゆなはあまり笑わなくなり口数も少なくなった。
いつだったか、下校時に男子数人にいじめられているゆなを見かけたので家にあったバットでおっぱらってやった!
でも、ゆなに「こんな事2度としないで!」と泣かれた。
しかも学校で結構な問題になり危険人物のレッテルを貼られた。
おかげで陰で「撲殺魔」とか「ドクロちゃん」って不名誉なあだ名がついた。
おねえちゃんはがんばったんだ!がんばったはずなんだ…とひとりごちる。
母の蒸発で父も酒量が増え、最近はいつも家にいる。
そんなある日、ゆなの悲鳴が聞こえたのであわてて飛んでいくと父がゆなの入浴を覗いていたそうだ。
この瞬間ウチの家はもう駄目なんだと悟った。
私以上に限界を超えたのはゆなだった…まぁ当然なのかもしれない。
ほぼ半裸に近い格好で泣き叫びながら家を飛び出したゆな。
父を殴ってやろうかとも思ったがそれよりも
「ゆな!」妹を慌てて追いかけた。
夕暮れの中、帰る家もなく絶望で真赤に染まった道を泣きながらゆなは走った。
何もかもが嫌になりひたすら破滅に向かって走った。
帰宅時間も相成って国道は行きかう車で溢れていた。
車の濁流に減速もせず飛び込もうとするゆなを必死に追いかけ、その背中にあと数センチに迫った時、私は道路の溝に足を取られ前につんのめってしまった。
「あっ!」
ゆなを止めるどころか妹諸共、車が行きかう激流に投げ込まれてしまった。
私たち姉妹にむかって突っ込んでくるトラックがスローモーションのようにみえた。

轢かれる瞬間、ゆなは笑顔だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あれ?今、トラックの轢かれると思ったのに・・・ぐえっ!」
気が付いたそこは琥珀の間を彷彿させるような豪華絢爛な部屋。
そんな部屋とは不釣り合いな鉄球付きの首輪がルカの首を絞めていた。
「な、なによコレ・・?それに何処なのよここは・・?」
頭が事態を把握できずにいたが大事な事を思い出した。
「ゆな!ゆな!」慌てて妹の姿を探すも鉄球付きの首輪が邪魔で鉄球の周りをグルグルと回るのが関の山。
「うがぁ!ウゼェな!これ!」鉄球にキレる。
「オイオイ、何だよ俺のネックレスが気に入らねーのか」
何時の間にかソファに男がひとり腰かけている。
「えっ!?」男の存在を認識した瞬間、部屋の温度が10度は下がったような寒気が全身を駆け抜けた。
そこにいるだけで意識してしまうような眼鏡の優男、それが私と大魔王アスタロト公爵の出会いだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(どうしよう・・お母さん・・・。
今、目の前にいるイケメンメガネさんは自分の事を悪魔とか言っています。
この前、ニュースでも女の子が拉致されて殺されたとかやっていたなぁ。
あんなのは可愛い子の話で自分には関係ないと思ってけど…そっか…私でも変質者に拉致されるんだぁ…)
そんな事で少し嬉しいと思う自分が悲しいとひとりごちる。
「誰が変質者だ!コラァ!」
自称悪魔のブラジリアンキックが炸裂、膝から崩れ落ちるルカ…。
「いいか!よく聞け!メス豚!」
倒れたルカの顔を踏み付けて自称悪魔が吠える。
「今からおまえに頼みがある!」
この体勢でか!と言い返したかったが顔を踏まれ、もがもがとしか言えない。
「もう一度言う!俺は魔界の大侯爵アスタロトだ!その俺が頼むっつてんだ!」
もがー!
「今からツレの魔王共とゲームすっから、おまえが俺の選手やれ!わかったか?!」
「わかるかー!」がぁーっと頭で足を押し返し吠える。
「それが人にものを頼む態度か!」
踏み付けられながらも睨み返すと、アスタロトはニヤリと笑った。
(その反骨心に満ちた目、俺の傀儡に相応しいぜ。)
「はいはーい、喧嘩はいけませんよ〜」
間の伸びた口調で諍いを治めたのは燕尾服を着こなし羊の頭蓋骨を仮面のように被った男、
いきなり現れた骸骨に「うわぁっ!」と悲鳴をあげると。
「そこは嘘でも『キャー』って言えよ、一応は女なんだろ?コラ」
「うるさい!何なんだ!何なんだ?あんたらは?」
「とりあえず皆様、いちど落ち着きませんか?」
この場でいちばん非常識な格好の骸骨が誰よりも冷静だった・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ボーンチャイナのティーポットからオレンジ色の液体がカップに注がれる。
「本日はニルギリのいい茶葉が手に入りましたので、どうぞ」
慣れた手つきで骸骨がお茶を用意してくれた。
ひとくち、お茶をすすり何とか落ち着け…ない。
「コレ、外してくれない?」鉄球付き首輪を指さす。
「まぁまぁ、まずは御説明からさせて下さい」優雅な所作で骸骨が一礼し自己紹介から始めた。
「申し遅れました、私は執事のアガシオンと申します、そしてこちらが我が主アスタロト侯爵様です」
冷やかな一瞥をくれアスタロトもお茶を一啜りする。
「はぁ・・・悪魔ねぇ・・・・」
「おや、まだ信じていただけないのですか?」
「どう信じろと」と言い終わらないうちにアガシオンが指をパチンとスナッピングした。
その瞬間、応接間は炎に包まれ何百もの魑魅魍魎と悪魔がルカを取り囲んだ。
「ひぃっ」低い悲鳴を上げ絶望的な恐怖に襲われた、心が魂が「怖い怖い」と震えた。
もう一度、アガシオンがスナッピングすると元の応接間に戻っていた。
「ご理解いただけましたか?」
「は…はい…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
再度仕切り直し。
お茶も淹れなおされ、テーブルを挟んでアスタロトと対面した。
「さてと、本題だ」
「は…はぁ…」
微かに震える手を押さえ何とか返事を返す、正直お家に帰りたくてしょうがない。
「イタリアのバチカン、そこにいる法王がもう間もなく死ぬ」
「はぁ」
「その法王の魂は俺らにとっちゃあ、マジモンのお宝だ」
「はぁ」
「で、他の魔王共もこの魂を狙っている訳だ」
「はぁ」
「そこで法王の魂を賭けて他の魔王共とゲームする事になった」
「はぁ」
「…さっきから辛気臭ぇ返事ばかりしやがって!人の話を聞いてんのか!?コラァ!」
怒号と共にまた、頭を足で踏みつけられる。
「最初の勢いはどうした?…所詮クズはクズか、あぁ!」
ふつふつと湧き上がる怒りが恐怖心を塗る潰していく。
「親もクズなら子もクズか…」
この一言で怒りのスイッチがばちーんと完全に入った。
「いい加減に足をどけろ!このスカシ眼鏡!」
ビビりまくる本能を怒りが叩きのめし、魔王相手にブチ切れてやった。
「さっきから好きに言いやがってクソ魔王、親の事…とか…い、言うな…う、う」
感情が高まりこぼれそうになる涙を必死に堪える。
「だめですよー旦那様ー、女の子を泣かせちゃあ」
「な、泣いてない!」
せっかく庇ってくれたアガシオンにまで噛みつく。
「おおっ、野犬の如く!」
うれしそうにおどけるアガシオン。
「なんで嬉しそうなんだよ、オメーは」
「嬉しいじゃあないですか、ここで俯いてしまうような娘に用は無いでしょう、旦那様」
「それもそうだ」
「さて、それではー改めてー」
「福音ルカ、今からお前に魔王主催のゲームに参加してもらう」
「ゲーム?」
「そうだ、さっきも言ったが優勝の商品が欲しくてな」
「あたしにできるの?」
「俺は勝てるコマを選んだつもりだ」
「ふ〜ん、でも何で魂なんか欲しがるの?」
それは私が御説明します、とアガシオンが一歩前に進み出た。
「魔界の悪魔のみなさんとか至高界(天界)の天使たちは皆人間の魂を欲しがる訳ですが
それはなぜかといいますと」
「ふんふん」
「魂を所有する者は権力をも所有するからなのです、人間がお金を欲しがるのと同じ、つまりたくさん持っている方がえらいのです」
「なるほど!」
ちゃんと説明してくれれば私にだって理解できる!と心の中で愚痴る。
その瞬間、アスタロトが 馬鹿にしたようにニヤリと笑った、むかつく!
説明を続けますねとアガシオンに言われ優しく諭された。
「もちろん魔界の四大実力者、我が主アスタロト様やルキフェル様、東方の広大な領地を治めているベール様とその腹心ベールゼブブ様などは別格の魂持ちなんです」
「しかし、量の他に質の問題もあります、アスタロト様は歴代の法王の魂を三つも持っているのでサタン様から特別に侯爵の位を貰っています。」
「コイツが?」とアスタロトを見ると睨み返された。
「で、そこで暗黙の掟として、一流の悪魔は直接この魂集めに参加してはいけないのです」
「なんで?」
「なぜなら法王や枢機卿の魂は悪魔も天使も欲しがります、一流どころがぶつかり合えば
それこそ最終戦争(アルマゲドン)になりかねないから、魔界では四大実力者と72人の魔王たち、至高界では上級天使たちは魂争奪戦に参加できません。」
「ふ〜ん」
「平民の魂なんぞ簡単なもんですが、これが敬虔なクリスチャンだと、グッと価値があがります」
何故かガッツポーズで力説するアガシオン。
「さらに位の高い聖職者だと天使も参戦します、ですから法王の魂になると戦争になりかねない訳です」
「そこで戦争回避の為に今回は人間のルカ様に選手としてこの魂争奪ゲームに参加していただきたいのです」
もちろん、ただとは申しませんと骸骨顔ながら妙な愛嬌を醸し出したアガシオンが切り出す。
「地位でもーお金でもー、恩賞はおもいのままでございますよー」
「えっ!マジっすか!?」
「はい、1億でもー2憶でもー!」
それならば自分の人生も家族も一発逆転できるかもしれない。
「でも、ゲームってどんなゲームなの、テトリス?」
「わかりやすく言いますとー、頭に風船を付けて割られたら負けーって感じですよ」
「あ、それならあたしにもできそう!」
「それではー、選手登録とー正式に契約をしましょーか」
「ふ〜ん、どうしようかな〜?」
ルカとしては先ほど脅かされた事を根に持ち、すんなりと承諾する気はなく渋って困らせてやろうと思った。
が、大魔王にそんな稚拙な思惑が通じる訳がなかった。
「やりたくねぇのか?」と、やや怒気を滲ませるアスタロト。
「何よ、また脅かすつもり!」
「では、そうしよう」
スッと左手をかざすと何も無かった空間から湯が張られたバスタブが現れた。
「お風呂?」
アスタロトが指をパチンとスナッピングすると再び何も無い空間から次は人が現れ、バスタブにザブンと落ちた。
妹のゆながスクール水着姿でバスタブに浸かっていた。
「あ、お姉ちゃん・・・・」
当然、事態を把握している訳もなく、バスタブの中でぽかーんとしていた。
アスタロトが自分の髪の毛を1本抜くと、髪はスルリと手から離れみるみるうちに1本のロープに転身し瞬くうちにゆなに絡まり座禅縛りに仕上げた。
「わ、わわっ!何これ?」
「おお、明智伝鬼も真っ青な縛りですねー旦那様」
「ちょっと!何やってんのよ!」
再びルカが激昂するも、
「脅し」と悪びれもせずに返すアスタロト。
「おい!ルカ、私を選手として使って下さいお願いしますと、言ったら使ってやろう」
「はぁ、何であたしがそんな事を言わなきゃいけないのよ!」
「言いたくなるようにしてやろう」ニヤリと笑うアスタロト。
取り出した温度計をルカの眼前に差し出し
「現在のバスタブの温度、38度…40…41」ニヤニヤしながら上昇する温度をカウントする。
「あ、熱っ!」バスタブのゆなが叫ぶ。
「ま、まさか…」
魔力でバスタブの湯はじょじょに温度を上げ熱闘になろうとしていた。
「クククッ早く言わないと妹がのぼせちまうぞ、ほれ!51!52!」
「あつぅ!あついーー!あついぃい!」
バスタブでゆなが絶叫を上げるも魔力を帯びたロープにガッチリと拘束され叫ぶしかできない。
「い、言う!言うからやめろぉ!」
「心をこめて言えよ」
怒りと悔しさで奥歯に血が滲むほど歯軋りをしながら、
「お願いします、あたしを選手で使ってください…だから、早く止めてよぉ…」
うれしそうに「まぁ、いいか」と呟き、指をスナッピングしバスタブを消失させた。
縛られたまま痙攣するゆなをアガシオンが氷嚢をどっさりと用意して介抱しはじめた。
首輪に繋がれていなければ駆け寄ってルカが介抱したかった。
「早く縄をほどいてあげて!」
「はい、ただいま」
グッタリしたゆなを、テキパキとロープによる拘束をはずしてソファに寝かし、そっとルカに耳打ちをした。
「お怒りはごもっとも、ですが今は我慢ですよー」
「でも、ゆなをこんな目にあわせて…」
「先ほども申しましたが、勝てば大金でも何でも手に入る訳ですよー」
それでも許せないものは許せない、頭で理解していても感情を御せるほどルカは大人ではなかった。
「妹さんの為にそこまで怒られるルカ様は本当にお優しい方ですが、優しいあなたさまに世間は、否、世界は優しかったですか?」
アガシオンの言葉が沸点に達した思考に冷たく浸透していく。
「そんな優しくない世界の横っ面を札束で引っ叩いてやりましょうよー」
所詮、我々は悪魔です利用すればいいじゃあないですかー」
怒りの温度は徐々に下がり、「それもそうだ」と納得しかけた。
「熱闘風呂は気に入らんかったか、やはり下剤を飲ませてスクワット100回にすればよかったかな?」
「ぶっ殺すぞ、このゲス野郎!」
アスタロトの余計なひと言にルカの怒りの沸点は再熱した。
「おさえて、おさえてー」
これで何度目の仕切り直しか考えたくもないがテーブルの上には1枚の契約書、書いている文字は見たこともないもので当然、
「読める訳ないじゃん!」
アガシオンが説明を始める。
「要は今回の魂争奪ゲームに参加して優勝する事を誓いますと、書いていますー」
「え、こんなにビッシリと文字が並んでいるのにそれだけ?」
「他にはゲームのルールなどが書かれていますがそれは後ほど説明しますですよ」
一抹の不安を覚えつつも説明を聞く。
「それと1番肝心な事ですが悪魔と契約すると死後、ルカ様の魂はアスタロト様の物になります」
「ええっ、それは嫌!」
「そうでしょうねー」
「おまえら、ムカついてしょうがねぇぞ」
「話が進みませんので無視して続けますねー」
不機嫌そうなアスタロトを無視してアガシオンが続ける。
「どうせ死後の魂には自我も何も無いので問題ないですよー」
「うー、でもなぁ…」
「生きている時に勝ち組になるチャンスなのですよー」
「それもそう…だね…」
「では、こちらにサインと血判をお願いします」
契約書にまずはサイン(福音るか)と名前を書いて、
「血判って血を出さなきゃいけないの?」
「針をご用意しましたので少々、チクッとしますよー」
マチ針を用意したアガシオンがそっとルカの親指を刺そうとした瞬間、
「まどろっこしい!」
アスタロトが持っていたペーパーナイフでルカの親指をぐさーっと刺した。
「痛あああ!」
盛大に痛がるルカをしり目にアガシオンがポンッと血判を押した。
「血っ…メッチャ血が出た、何すんのよ!」
「どうせ女は月に1回血を垂れ流してんだろ、ガタガタ言うな!」
「おまえは最低だぁ!!」
ルカの絶叫と共に契約は完了しました。

親指を包帯でぐるぐる巻きの応急手当をしながら、アガシオンはゲームのルール説明を始めた。
「まずは、こちらがゲームの参加証になります」
アガシオンからファンシーなドクロマークの描かれた金属製のカードと、カードホルダー型のバックル付きベルトを手渡された。
「コレを他の選手に破壊されると失格になりますので大事にしてくださいねー」
「要はこれが風船割りゲームの風船って事なのね」
「そうです、そしてこのカードをバックルに挿入する事で戦闘装束に変身できます」
「へ、変身?」
「はい、変身する事で武器も使用可能になりますのでー」
そう言うとアガシオンは、いかにも魔法の杖らしい棒きれを取りだした。
「もしかして、その棒で殴り合いするって訳?」
「いえいえ、この棒はマジックマテリアルと言います、これに使用者が触れると、その人が怖いとか強いと思っている武器になってくれます」
「へぇ〜」
「では、どうぞ」
そう言ってマジックマテリアルを差し出した。
恐る恐るルカが触れると、それは1丁の拳銃に姿を変えた。
「ほほう、コルト社のマグナム弾対応型高級リボルバー、コルト・パイソンですね〜」
「ふ〜ん、この銃そんな名前なんだ」
数日前に深夜のテレビで松田優作が使っていた銃だったので覚えていた。
昼は善良なサラリーマンを演じ、夜は知力と暴力を駆使して権力に戦いを挑む男の物語に
羨望と畏怖の念をルカは抱いていた。
昼は姉として気丈に振舞っていても、たまにすべてを打ち壊したくなる衝動に駆られる
そんな自分と重ね合わせていた、それを見透かされたような気がしてゾッとした。
そう、マジックマテリアルは使用者の心にある死を象徴化し畏怖を形にする魔の物質、人を暴力に導く魔法の杖なのだ。
「あの〜、あたし拳銃なんて撃った事ないよ」
「心配ご無用ー、発射されるのは本物の弾丸ではありません、ルカ様の魔力を弾丸にして撃ちます、当たっても痛い程度ですー」
「あ、そうなんだ」
「ちなみに1回の変身で使える弾は6発なので注意して下さいー」
「えーっ、たったの6発ぅ?」
「撃ち過ぎると魔力の使い過ぎで動けなくなります故にそれと、参加証を破壊できるのはマジックマテリアルの攻撃のみですのでー」
「なるほど」と頷きながら参加証の丈夫さを確かめる。
「そしてゲームの舞台は魔界にある無人島を貸し切りにしました、その島から出ると失格になるので気を付けてくださいねー」
ルカの腰にベルトとバックルを装着しながらルール説明を続けるアガシオン。
「要は変身して武器による攻撃で相手選手の参加証を破壊すれば勝ちと言ういたってシンプルなゲームでございますー」
「頭の悪いおまえでも理解できる内容だろ?」
「いちいちムカつくなぁ!」
「よーし、理解できたなら行って来ーい!」
「えっ?」
いきなり目の前に現れた黒い穴、そこにルカはアスタロトに蹴り落とされた。
「あああああっ!?」
これから始まるのは死のバトルロワイヤル、そんな事も知らずにまんまと騙され落ち行くのは絶望溢れる戦場と言う名の奈落の底。

「あいたぁ!」
お尻から落ちて、尾てい骨にひびく痛みに顔が歪む。
「いきなり何すんのよ…って、ここ何処だ?」
先ほどまでいた豪奢な部屋とは打って変わって今、ルカがいる場所は曇天の下。
枯れ木がポツポツとあるだけの荒涼とした大地。
空っ風に吹かれ生気の欠片も感じさせないこの地こそ魂争奪ゲームの舞台。
「あーあー、テステスー、ルカ様ー聞こえますかー?」
何処からともなくアガシオンの間延びした声が聞こえた。
「え、何処から声が…」
キョロキョロと見回すが声はすれども姿は見えず。
「首輪ですー、首輪が通信機になっておりますー」
何時の間にか鎖と鉄球は外れていたが首輪だけは未だにルカの首にはまっていた。
うざったいが通信機ならしょうがない、腑には落ちないが納得するしかなかった。
「ところでここは何処なの?」
「先ほど申しましたゲーム用の無人島です、ついでに申しますと上陸と同時にゲームスタートになりますので気合入れて、がんばって下さいねー」
「ええっ、いきなりぃ!?」
心の準備という言葉は存在すらしていなかった。
「はいー、ですから他の選手に見つからないようにー」
と、アガシオンが言った矢先に他の誰かの存在を認めた。
「あ、あそこに誰かいるけど…」

その頃、気を失っていたゆなが目を覚ました。
「お、タヌキ寝入りは終わりかい人質姫。」
開口1番、アスタロトがゆなに話しかける。
「バレていましたか…」
「だいたいの事情は把握しているようだな」
「はい、寝たふりをして聞いていました」
「おまえ、自分の立場を分かっているのか?」
「はい、姉を奮起させる餌と自覚しています」
ゆなの洞察力と理解力に、さすがのアスタロトも感心した。
「執事さんと侯爵様の、巧みな飴と鞭で見事に騙される姉が滑稽でした」
クスクスと笑いながら語るゆな。
「随分なすれ違い姉妹だな、おまえは姉が嫌いなのか?」
「嫌い…嫌いと言うより見るに堪えないというのが本音です」
「見るに堪えない?」
「はい、自分1人で苦労を背負い込み、悲劇のヒロインを気取っている様が嫌です」
「ふ〜ん、なるほどねぇ」
アスタロトにはどうでもいい事だが、報われないルカの姉妹愛が愛おしくそして滑稽に思えた、この事実を知った時、ルカはどんな顔をするだろう?
その瞬間を想像するだけでいつもの酒が3割増に美味く感じる。
「それで侯爵様にお願いがあります」
「何だ、言ってみろ」
「姉が優勝したら私と1対1のゲームをさせて欲しいのです」
「ほう」
「優勝で喜んでいる時に絶望のどん底に突き落としてあげたいのです」
「もし、ルカが負けたらどうするつもりだ?」
「その時は私がトドメを刺していいですか?」
「いいだろう」喜々と契約書を用意するアスタロト。
頭の可笑しい妹でお前は本当に俺を楽しませるなぁルカに対する賛辞の念を禁じえない。
「では、姉が優勝できる様にせいぜい良い悲鳴で応援してやれ、ゆな!」
「はい」作り物のような笑顔で返事した。
ゆなとの契約を済ませ、アガシオンに100インチスクリーンに世界のあらゆる場所を映し出す千里眼を接続させゲーム観戦の用意をしている時に、来客の知らせが来た。
「こんな時に来客だと、誰が来た?」
「魔王フラウロス様でございますー」
ソロモン72柱の1人魔王フラウロスが何の用だろう、魔王なら魂争奪ゲームの用意でフラフラしている時ではないはず、なんにせよ門前払いする訳にもいかないので通すようにアガシオンに支持した。
「ボンジュール、公爵おひさしぶりザンス」
豹柄のスーツに筋肉質の体を包んだ紳士、魔王フラウロスがにこやかに挨拶し部屋に入ってきた。
服装のセンスと喋り方はふざけているが、炎と神学のエキスパートのフラウロス。
「ひさしぶりだな、今日は何の用だ?」
すいっとスクリーンを指さした。
「ミーの選手と侯爵の選手が、今まさに激突せんとしているザンス、せっかくなので一緒に観戦しようと思いお邪魔したザンス」
そう言われて断る理由もないので、アガシオンに椅子と酒を用意させた。
魔王2人がスクリーンを眺め杯を傾けた。

「誰かこっちにくる、どうしよう?」
慌てふためくルカにアガシオンが冷静に答える。
「この島には選手以外はいませんので、選手の誰かさんでしょう。
「ええっ、どうしょう」
「とりあえず、挨拶でもしてはいかがでしょうか?」
話をしている間に気がつけば相手はルカの5メートル付近にまで近付いていた。
「うわ、外人だ」
腰にまで伸びたブロンドの髪、スラリとした長い脚、まるでモデルのような体型だった。
「は、はろー…」
ドン滑りの空気が漂う中、言われた通りにとりあえず挨拶してみたら矢継ぎ早に捲し立てられた。
「どうしょう〜何をいっているのかサッパリわからないよ〜」
「でしょうね、ちなみに英語です」
アガシオンとコソコソ話している間も相手はキーキーとまくし立てている、怒っているのは何となくわかる。

3文コントを観ているような気分になったアスタロトがフラウロスに話しかける。
「おまえの選手は何処で見つけたんだ?」
「オウ、彼女はアメリカで見つけたザンス」
「ほう」
「アメリカ人の元ティーンモデルをやっていたザンス」
「何だ、元がつくのか」
「素行が悪くてモデル業を干されていた所を
スカウトしたザンス」
「1流モデルとして返り咲かせてやるって言ったのか?」
「そう、そしたらイチコロザンスよ」
「ちょろいなぁ」と笑いながら観戦を続けた

アガシオンは現状打破の為に相互同時通訳を提案した。
意思の疎通が出来なければゲームも盛り上がりに欠けるという判断なのだが、ルカにはえらく感謝された。
ルカの首輪を通して英語が日本語に聞こえるように魔法をかけた。
同時にフラウロスもブロンドの少女に通訳の
呪いをかけた、こちらは首輪ではなく右手の手錠を通してである。
「日本人、とっとと負けを認めなさい」
言葉が通じるようになった相手の第一声がこれである。
「ええっ、嫌だ」
「あなた、私の事を知らないの?」
あからさまな怒気を放ちつつ聞いてきた。
「ごめん、知らない…」
オーバーアクションで「信じられない」と叫ぶブロンドの少女。
「このスーパーモデルのアンジェラ・ハリーを知らないなんて、だからアジア人は嫌いなのよ!」
そう言われても知らないものは知らないし、
横柄な態度にルカもだんだん腹が立ってきた。
そこへアガシオンから相手のプロフィールの説明がきた。
「アンジェラ・ハリー、アメリカ人の17歳で、アメリカでは有名なティーンズモデルだそうです」
「あー、なんとなくそんな感じだね」
「ですが、後輩モデルに嫌がらせなどのスキャンダルでモデルを干されたそうです」
「そんな感じだ」
意地悪で高慢、第一印象どおりの相手だ。
「けど、何で相手の事をそんなに知っているの?」
「言い忘れておりましたが、全選手のプロフィールは共通情報として各陣営に届いております、ただし武器などの情報は秘密です」

その時、アンジェラが大笑いした。
手錠を通じてフラウロスからルカのプロフィールを聞いた瞬間、笑いだしたアンジェラ。
「はははっ、所詮は金欲しさのようね日本人」
「ち、違う」
そう、ルカはまだ優勝時の恩賞を決めかねていた、確かにお金は欲しいがそれよりも望みのものがあった。
本当の望み、それは「お母さんが家に帰ってきますように」
お母さんが帰ってくれば、また家族が元に戻るような気がするから。
「まぁ、何でもいいわ」
大笑いした事で多少、冷静さを取り戻したアンジェラは髑髏の参加証をベルトのバックルに差し込んだ。
「変身!」
参加証がアンジェラの虚栄心を魔力に変換しバックルを通じて迸る閃光が一瞬にしてアンジェラを戦闘装束に変身させた。
ビリビリとしびれるような感覚がルカの背筋に走る、変身することにより魔力の波動が大気を震わせた。
魔法の杖マジックマテリアルを振りかざす。
「マテリアライズ!」
その声に呼応し杖はアンジェラの力の象徴に姿を変えた。
アンジェラの両手に握られた2丁のベレッタM92。
「ホラ、さっさと参加証を出しなさいよ!」
さすがアメリカ人、銃を突き付けて脅す姿はなかなか堂に入っている。
「誰が出すもんか!」
ルカの拒絶にアンジェラの口元が嗜虐の笑みに歪む。
「出せっつてんでしょ!
アンジェラの怒号と共にベレッタの銃口にマズルフラッシュが瞬く。
「ぎゃ!」
発射される弾丸は魔力で形成されており、当たっても死にはしないが、硬球をぶつけられるくらいの威力はあるので、思わず苦悶の声をあげその場に蹲ってしまう。
「痛いのは嫌でしょ、早く参加証を出しなさいよ」
アンジェラは再び銃口をルカに突き付ける。ニヤリと笑い引き金を引く。
ルカは痛みに耐えながら飛び退き、弾丸をかわし距離を取ろうと遮二無二と走る。
その背中をアンジェラの2丁の銃が容赦なく撃ちすえた。
「がはっ」
衝撃で呼吸が止まりそうになり膝をつく。
「あ〜らら、ごめんなさい」と言いながら、アンジェラはルカの背中にもう1発撃ち込んだ。
痛みで倒れこむルカに最後通牒。
「最後よ、参加証を出しな!さもないと動けなくなるまで撃ちまくるわよ」
迂闊に近づいてくるアンジェラめがけて、ルカは掴んだ砂を眼潰しよろしく、その憎らしい顔に叩きつけた。
「あうっ」
視界を無くしながらも、アンジェラは出鱈目に銃を撃ちまくる、反撃しようにも弾幕に阻まれ近づく事ができない。
ルカは体制を整えるため、近くの枯れ木に身を隠した。
その間もアンジェラはヒステリックに乱射し続けた。

「ルカ様ピンチでございますー」
首輪からアガシオンの間延びした通信が聞こえる。
「めっちゃくちゃ痛いじゃんか!」
いきなり恨み事を叫ぶ
「ですから、当たっても痛い程度と申しましたのにー」
「それにあたしには弾は6発しか使えないって言っといて、あいつは何発も使っているじゃない、ずるい!」
「申し訳ありません、時間が無くていろいろと説明不足がございますー」
アガシオンが言うにはゲーム開始時間に危うく間に合わないくらいギリギリの参加だったらしく、だからアスタロトが慌てて蹴り落としたそうだ。
「それで説明不足が発生してしまいましたー」
「で、何が説明不足なのよ、手早く言って」
「はい、実は選手は武器の他に魔法をひとつだけ使う事ができますー」
「魔法?」
「はい、例えば人より早く動けたりとか、狙った相手に必ず命中する魔法とか、その人にあった魔法が使えます」
「それってあたしも使えるの?」
「はいー、使えますよー」
どんな魔法が使えるのか聞こうとした瞬間、ルカの足元をアンジェラの流れ弾が爆ぜる。
「わっ!」
短い悲鳴にアンジェラが反応する。
「そこか!」
視界はまだ、悪いようだが確実にルカのいる位置に向けて乱射する。
「しまった、見つかった!」
「ちなみにあのアメリカ人の魔法は魔力が尽きない限り弾を撃てる魔法ですねー」
「今、忙しいのがわからんかぁ」
空気を読まずに説明を続けるアガシオンに軽くキレる。
「逃げるな、アジア人」
目を擦りながら迫るアンジェラ。
「ルカ様も変身して応戦しいとボコボコにされますよー」
本音はこのまま逃げ切って、他の選手が潰し合いをしてくれればいいのにと思っていた。
「などと、ふざけた考えじゃあねーだろうなぁ、てめぇ」
通信からアスタロトの声が轟く。
「逃げきって優勝を狙うのも作戦じゃん!」
「ざっけんな、そんな作戦を俺が許すと思うか!」
「だって」
「そんな考えで勝てるか、ボケ!」
ならば、戦いたくなるようにしてやろう、とアスタロトの呟きの後に聞こえてくる悲鳴。
「ちょ、何してんのよ!」
「おまえがやる気を出すように妹に応援させているんだよ。
空間にゆなの映像が映し出される。
椀状をした部分を頭にはめ、万力締めの要領で頭を上下から押し潰していくという器具をはめられているゆな。
「このハンドルを回すと頭を締め付けて、最終的には頭蓋骨が粉砕される仕組みだ」
「お姉ちゃん、助けてぇ」
ハンドルをひと回しすると、まずは顎が圧迫されてくぐもった声しかだせないようになる。
「ホレホレ、早くしないと顎が砕けて最後は頭蓋骨もペシャンコだぞ」
ハラワタが煮えくりかえる思いをグッと堪えて、最後の理性で嘆願する。
「わかりました、戦うので妹を助けてください」
低く怒りに震える声を絞り出す。
「よーし」とうれしそうなアスタロトの声と共に映像も消え通信も切れた。
人を人と思わないアスタロトの所業、人を見下し追い回すアンジェラや父親の堕落ぶり、
様々な怒りがルカの心を黒く塗りつぶしていく。
視界を取り戻し逃げるルカに追い付いたアンジェラ、ルカが立ち止まっているので、ようやく諦めたのかと判断した。
「さっきはよくもやってくれたわね」
ぶつけられた砂の報いに2,3発はいたぶってやろうと銃口を向けるが、先ほどのルカと何処か違う雰囲気を感じた。
スッと参加証を取り出すルカ。
「どいつもこいつも人を何だと思っている!」
黒い怒りの感情がルカの中で濁流のように流れる。
「変身」
叫びと共に参加証をバックルに差し込む。
ルカの怒りを魔力に変換し西部のガンマンを彷彿させる戦闘装束に姿を変えた。
「マテリアライズ!」
自然と口から言葉が出てマジックマテリアルをコルトパイソンに転じ戦闘装束に付いていたガンホルダーに収まった。
変身したとたん、まるで魂に刻み込まれたかのように、武器の使い方から自分の魔法の事まですべてを理解する事ができた。
相手の変身に一瞬動揺するも、即座に銃を構えて乱射するアンジェラ。
が、悪魔謹製の戦闘装束それを身に纏い魂から理解し使いこなせなければ意味は無い。
所詮、アンジェラは魂からの理解なく上辺だけの理解と使い方しかできていなかった。
乱射される弾丸を軽やかなステップと優雅な重心の移動で避ける。
戦闘装束はルカの魂とリンクし身体能力を底上げし、正に人ならざる動きを披露した。
全弾をかわされ呆然とするアンジェラ。
「うそ…」
怒りの視線を向けるルカに畏怖するアンジェラ、恐怖に駆られ再び2丁の銃を構え獣のように絶叫しながら乱射する。
「アダージオ」と呟きゆるやかな速度で、白鳥の湖を踊りながら弾丸をかわすルカ。

観戦しているアスタロトもルカのステップに思わず感心する。
「あいつ何かスポーツでもやっていたのか?」
「昔、バレエをしていましたが月謝が払えなくて泣く泣く辞めていました」
頭蓋骨粉砕機を装着したまま、表情も変えずにゆなが答えた。
「まだ、未練があるんだ…みっともない」
吐き捨てるようにゆなが呟いた。
観戦していたフラウロスも、ぽつりと「これは勝負ありザンスねぇ」とこぼした。

魔力の弾丸を撃ち過ぎによる眩暈を起こし乱射する手を止めるアンジェラ。
その隙をルカは見逃さず、ガンホルダーからコルトパイソンを引き抜き、アンジェラに向けて構える。
銃握に力をこめて絞るように引き金を引き続けざま3発発射する。
「ひぃ!」と低く唸るアンジェラの横を3発の弾丸が風切りながら通り過ぎた。
「外れた?」
ヘタクソで助かったと再び、銃を構えるアンジェラ、魔力が尽きかけていようとアジア人に負けるには嫌だ、何故なら虐めていた後輩モデルもアジアンビューティーと持て囃されていた日系人だった。
「アン・ナバン!」
ルカの前方に、と言う意味の叫びに応じ外れたはずの弾丸はくるりと方向を変えアンジェラの前方に戻ってきた。
「えっ?」
「アンボアテ」
戻ってきた2発の弾丸はまるで踊るようにクルクルと旋回しアンジェラを取り囲み、2丁の銃を弾き飛ばした。
幼少の頃、ただひたすら好きで踊っていた時は幸せだった。
母の蒸発に端を発し家庭の事情で辞めなければならなかったバレエ、そんな心に負った傷は今、ルカだけの魔法、踊る弾丸「バレット・バレエ」として発現した。
「アンボアテ・アン・トゥールナン」
3発目の弾丸はアンジェラの顔面にクリーンヒットした。
「あがっ!」
駄目だ、顔はやめて撃たないでと言おうとしても喋れない、打ち砕かれた鼻骨と前歯では言葉を紡げなかった。
「撃たれたら痛いってわかったか?」
説教するつもりはなかったが、ルカの周りには人を傷つけても平気な人達が多かった、アンジェラもその1人だ。
このまま、残りの弾丸で打ちのめしてやればさぞ気分もいいだろうが、それでは自分も嫌な人間の仲間入りだ。
そう考えると何だか虚しくなり、怒りもおさまってきた。
アンジェラがもごもごと言おうとしているが何を言っているかわからない。
「何?」
「どうやら顔は撃たないで、と言っているようです」アガシオンが代弁した。
「撃たないわよ」そう言い捨て、アンジェラに背を向け立ち去ろうとした瞬間、落ちていた銃に飛びつきルカめがけて発砲した。
「シソンヌ!」
フワリとジャンプし軽やかにかわし着地と同時に残り3発の弾丸を撃った。
「アン・フォス、アン・バー!」
ルカの声に反応し弾丸はアンジェラのバックルを撃ち抜き参加証を粉砕した。

「おお、トレビアーン」
勝負が決した瞬間、フラウロスが叫んだ。
「いやぁ、良いザンスねぇルカちゃん、ウチの選手は負けましたがいい勝負が見れて真に重畳ザンス!」
「なかなか楽しめたな!」
魔王2人は結果よりも内容を喜んでいた。
その様子を見てゆながアガシオンにそっと聞いた。
「ねぇ、どちらかといえばみんな優勝に興味無さそうだけど、いいの?」
「ああ、実はですね今回の法王の魂は天界の連中に持っていかれてしまいました」
「えっ、それじゃあこのゲームの意味は?」
「まぁ、天界に負けた魔王様達の憂さ晴らしです」
そう聞いてゆなはどこまでも道化な姉に愛おしさと憐憫を感じほそくえんだ。
憂さ晴らしゲームとは言えアスタロトはルカの戦いにご満悦の様子だ。
「で、他の選手はどんな状況だ?」
アスタロトがアガシオンに聞くと、待ってましたとばかりに、資料を千里眼に映し出した。
映し出されたのは積み上げられた瓦礫の山、
その麓にチェーンソーを武器にする少女は魔王アンドロマリウスの選手、カナダ人のマリー・シェーファー。
それに相対しているのは魔王ダンタリオンの選手イスラエルの少女ゴルダ・メイア。
メイアがマジックマテリアルを短機関銃のウージーに変えて、先手必勝とばかりに乱射、一斉に襲い掛かる9ミリパラべラム弾。
それでも動じず、不敵な笑みで2ストロークエンジンに魔力を注ぎ、爆音の咆哮をあげるマリーのチェーンソー。
「セオドア・ゲイン!」
振り下ろしたチェーンソーは空間を切り裂き、異次元に繋がる裂け目を作りだした。
メイアの放った弾丸はすべて、裂け目に吸い込まれた。
「そ、そんな…」
 気が付けば全弾すべて撃ち尽くし呆然とするメイア。
チェーンソーを上段に構え、メイアにトドメを刺そうとした刹那、マリーのバックルを赤い閃光が貫いた。
「えっ、あれ?」
 何が起こったのか、その場の2人は理解できていなかった。
赤い閃光が飛んできた方向をメイアが向くと
瓦礫の山頂にトンガリ帽子にマント姿の少女が自分の身長ほどの銃を構えていた。
距離にして200メートル、なのに赤い目がメイアを睨んでいるのがわかる。
「っ…はぁ!」
赤い目に射すくめられ、呼吸をするのも忘れるほどの恐怖をメイアが襲う。
赤い目の少女、彼女こそ4大実力者の1人、東方のベール大王の選手フィンランドのリナ・トーバルズ、使う武器はモシン・ナガン28M。
魔法は狙った獲物を逃がさない魔眼、捕食者の眼。
睨まれれば最後、どこに逃げ隠れしても見透かされる。
モシン・ナガンを素早く構え、照門から照星を通してメイアを狙い撃った。
呆けているメイアのバックルを1撃で撃ち抜き、あっと言う間に撃墜の星を左手に2つ宿した。
恐るべきは魔眼は見透かすためのもので、射撃のセンスはリナが元々、持っていたもの。
 「ケワタカモ猟よりも人を相手にする猟のほうが楽しい…」
 そう呟き、次の獲物を求めて山を駆け下りた。

「今のがベール大王の選手ですー」
アガシオンがアスタロトに解説した。
「ケッ、スナイパーなんざ俺の趣味じゃねぇなぁ」
どうせ、大した相手ではないとアスタロトは見たようだ。
「それとルキフェル様の選手も勝ったようですが、ルキフェル様本人が自慢したいから、後ほど我が屋敷にいらっしゃるそうです」
 好きにさせろと、素っ気なく返事した。
「この調子でサクっと優勝しちまうか!」
どうせやるなら勝ちを狙うのは当然。
「チッチッチッ甘いでちよ、アスタロト」
部屋の片隅に無数の蠅が集まり人の形を形成し、髑髏模様の翅を羽ばたかせた少女が現れた。
「ベールゼブブ!」
嫌悪を露わにアスタロトが少女の名を呼ぶ。
魔界4大実力者の1人、アスタロトの対立派閥の長。
「たかがゲームでちけど、優勝するのはあちしの選手でち」
「ホウ、大した自信だな、クソガキ」
一触即発の雰囲気にフラウロスが苦言を呈する。
「お2人の仲は相変わらずザンスねぇ」
「悪かったな!」
「ベル様の選手はどんな選手ザンスか?」
フラウロスがベールゼブブの選手に興味を示す。
「あちしの選手はコレでち」
千里眼に映し出された映像は岩場に隠れている1人の少女。
「アフガニスタンでスカウトしたでち」
アフガンの少女が操る武器は異様なものだった。
「あれは何ザンス?」
魔界の空を音も無く飛ぶのは地上攻撃装備を持った無人攻撃機(UCAV),高度数千メートルから機械仕掛けの眼で獲物を探し対地ミサイルの爪で獲物を狩る猛禽類、プレデター攻撃型。
他の選手を一瞬にして2人を空爆し勝利した。
「そんなんアリかよ!」
「アリでち、ウチの選手は強いでちよ!」
自慢げに話すベールゼブブの憎らしい事。
「ケッ、ウチの選手もかなりヤルぜ」
「フン、対戦でギタギタにしてやるでち」
「おー、望む所だ!」
ムキになり、ヒートアップする2人。
「どっちもお子様ザンスねぇ」
呆れるフラウロスが忘れていた事を思い出す。
手錠を通じてアンジェラに通信をした。
喋れないアンジェラはモゴモゴ言うだけ。
「アンジェラ〜、残念ザンスよ〜残念ザンスが契約書にも書いてあるとおり優勝できなかった時は契約不履行とみなし即座に魂を頂くザンス」
どういう事?と思った時、右手の手錠が肉食獣のように牙をむきアンジェラの右手を食い千切った。
「んんん〜〜〜!」
くぐもった悲鳴にルカが振り向くと、牙の生えた手錠がアンジェラを食い散らかしていた。
「な、何アレ?」
「あー、あれはですねぇ」とアガシオンが説明を始める。
契約書にはこう書いてあると、このゲームに優勝する事を誓う、と…優勝できなかった時、つまり敗北した瞬間に肉体は食われ魂は魔王のモノになるという事だそうだ。
「じゃあ、あたしも負けたら…?」
「はい、ああなりますねー」
食い散らかされたアンジェラを見て呆然とするルカ。
「あ、戦闘が終わったら戦闘装束は解除したほうがいいですよー、魔力の波動で他の選手に居場所がバレやすくなりますのでー」
再びルカの心が恐怖に囚われていく。
ズキリと左手に鈍痛が走る、見れば手の甲に星のマークが付いていた。
「コレは…?」
「それは撃墜数です、勝てば星が増えていきます、星の多い人は強敵の証なので注意してくださいねー、ついでに倒した敵の武器は自分のものにできます、勝利者のご褒美ですー」
アガシオンが何か言っているが、頭にはちっとも入らない。
手の甲の星は罪の証、アンジェラを殺した証、
でも、自分も死ぬのは嫌だ。
罪悪感と恐怖心に囚われたルカはその場から早くどこかに逃げたかった。
変身を解除し参加証を握りしめ走った。
日の光も射さず恵みの雨も降らない魔界の大地に、はらはらと涙の雨を降らせながら、ありもしない希望を追いかけ絶望の結末にむかって。
              続く。
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posted by かずゆ at 19:21| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント

この前までド ウ テ イだったんだけど まんこ汁ってウマすぎっ!!(゜д゜)
必死でペロペロなめてたら相手が感じすぎてすんごい イ キ 顔 になってたのには笑ったわwwwww

しかしなめるだけで満足して大金払ってくれる女って結構いるもんだねwww
http://BulL.WaooOOn%2enet/qjbrq9d/
最近はココでずっとあま〜い汁をすすりまくってるよwww(両方の意味でwwwww)
Posted by やまぐっさん at 2009年09月23日 06:41
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